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【土地の湿気】住宅じめじめリスクと対処法

じめじめとした土地の悩みを抱えている方は、多いのではないでしょうか。

20年ほど前の晩秋、じめじめした土地の原因を知りたいと、知人から調査依頼がありました。新しい木造住宅の床下を覗かせてもらいました。

驚きました。床下の空気は生暖かく、強烈なカビ臭で息ができないほどでした。よく見ると、木材は腐っており、ボロボロでした。築5年なのにです。

私は長年、地盤、地質、防災を専門に仕事をしてきましたが、住宅を持つ人の悩みとして、少なからず「湿気」で苦労していることを知りました。

それ以来、土地選びの重要な視点に湿気を加えることや、じめじめした土地の持つリスクのアドバイス、そして、その改良・改善方法を提案してきました。この記事では、そのときのアドバイスの一部をもとに作成しています。

この記事は、こんな方におすすめです。

こんな方におすすめ

  • じめじめした土地のリスクを知りたい
  • じめじめした土地に悩みを抱えている
  • 湿気の多い土地の原因と対処法を知りたい

湿気の多い土地が抱える3つのリスク

湿気の多い土地が抱える3つのリスクは、次のとおりです。

  • 人の健康に影響があること
  • 住宅の耐久性能が低下すること
  • 湿気対策にはお金がかかること

 

人の健康に影響があること

湿気が多いと、カビ、細菌、シロアリやダニなどの害虫を繁殖させることになります。

長期間にわたり、このような環境下で生活すると人の健康に影響を及ぼします

とくにカビは、住宅に使用する建材のほぼすべてを栄養にすることができ、水分・湿気が多いと驚異的な増え方をします。

カビが人体に与える影響として、感染症、アレルギー、中毒を引き起こす可能性があり、注意が必要です。

湿気が多い木造住宅に住んでいる方で、体の調子がよくないと感じている方は、原因の1つにカビを疑ってみるべきです。

 

住宅の耐久性能が低下すること

たくさんの人に選ばれている木造住宅の寿命は約30~80年、鉄骨は30~60年、鉄筋コンクリートは40~90年といわれています。

住宅の構造 寿命
木造 30~80年
鉄骨構造 30~60年
鉄筋コンクリート構造 40~90年

出典:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/common/001011879.pdf

一方で、日本の木造住宅は30年前後で解体されることが多く、住宅寿命が短い傾向があります。

理由はいくつかありますが、もっとも大きな理由は2つあります。それは使用材料と湿気です。

 

使用木材の質

スギ、ヒノキ、ヒバなど優良な木材を使用すれば長持ちします。

しかし大量生産される外国製の木材は安価ですが、日本の高温・多湿な気候に合わず、早い段階で割れたり、朽ち果てたりします。

 

土地の持つ湿気

湿気が特に多い土地(乾きにくい土地)では、使用木材の腐蝕が促進されます。

またシロアリ等の害虫が繁殖しやすい環境になり、木材が激しく傷みます。湿気が住宅寿命を縮める1つの要因です。

 

湿気対策にはお金がかかる

湿気の多い土地を改善しようとすると、相応のお金が必要になります。

土地を購入するとき、価格、利便性、環境などを基準にして検討しますが、じめじめした土地では、その対策費用も考慮して検討しましょう。

 

湿気対策の費用も考える

たいていの人は、価格、利便性、環境などのバランスで土地を選ぶと思います。

しかし何といっても価格は重要ですよね。

でも湿気の多い土地の場合、購入して住むことを考えるなら、前もって湿気対策の費用を考慮しておいたほうがよいでしょう。

 

事 例)

例えば、A:(2200万円)とB:(2000万円)の土地があったとします。B:(2000万円)の土地は、じめじめしています。B:(2000万円)の土地で、家を建てる前に湿気対策を検討したところ、300万円かかる見込みとなったとき、かかるお金は、

A:(2200万円) < B:(2000万円+300万円)

となります。A:(2200万円)の土地を選んだほうがお得になります。

 

湿気対策は家を建てる前に

実際には、余程ひどい土地を除いて、湿気対策を考慮して土地の価格が決められているわけではありません。

売り手は、もちろん土地を売りたいわけですから、利便性や環境がよければ、その点を推して価格を決めています。

一方、買い手も、最初は湿気の多い土地のリスクについて、ほとんど知識がありません。だから住み始めてから、初めて問題に気づくのです。

一般に、住み始めてから湿気対策しようとすると、お金が余計にかかります。しかも、住んでからは、その根本的な原因を取り除くことは難しいので、ほとんど対処療法的な対策しかできないのが実情です。

住んでから後悔しないためにも、土地を購入する前に、湿気が多い土地かどうか自分で観察してみましょう。

そして仮に、湿気が多い土地でも住みたいと考えるなら、家を建てる前に湿気対策をしてしまいましょう。後々、ひどい湿気で悩むことはなくなることでしょう。

 

湿気が多い原因はなに?

土地によって異なりますが、じめじめする直接的な原因は、「水が滞留すること」「風通しが悪いこと」ですが、根本的な原因は、ほとんど下の項目のどれかに当てはまります。

自然的な原因

✅水が集まりやすい、たまりやすい地形

✅過去に田んぼ、ため池、湿地等だった地形

✅水が浸透しにくい地質

✅水分を蓄えやすい地質

土地造成上の原因

✅土地が周辺よりも低く、排水しにくい土地

✅不適切な盛土と地表排水施設

✅排水機能が失われた擁壁

環境上の原因・その他

✅日照時間

✅風通し

✅住宅の集水・排水機能の劣化

 

湿気の対処法

土地探しの際やっておくべきこと

購入前の段階では、以下の内容を参考に行動してみましょう。

事前に土地の状態を観察しよう

土地の購入前なら、土地の状態を自分の目でよく観察してください。

タイミングとしては、雨の降ったの翌日から数日間がよいでしょう。

基本的に、以下の2項目をじっくり観察しましょう。

できれば自分の土地だけでなく周囲の家屋やブロック塀、擁壁付近、排水施設をよく見てみてください。

観察すべきポイント

✅何日も水たまり、湿気が残っている

✅コケ・カビが目立つ

 

湿気が多い土地だと事前にわかった場合

観察の結果、湿気が多い土地だとわかった場合、土地の価格、利便性、環境に加えて、湿気のリスクを十分考慮して、土地を購入するか決めましょう。購入するのであれば、湿気の原因を取り除く対策と対策費用を考えましょう。

原因別に見た湿気対策は、以下がおすすめです。なお、湿気が複合的な原因によるものであれば、複合的対策を検討してください。

 

✅自然的な原因の湿気対策

→表層地盤の改良

効果:地表付近の湿気を遮断する。

✅土地造成上の原因の湿気対策

→盛土、排水溝、排水桝の設置

効果:低い土地を修正し水を滞留させないようにする。地表水の排水をスムーズにする

対策費用について

紹介した対策の費用は、一般的な居住用の土地で20万円~100万円といったところです。ただし土地の広さ、場所、道の広さ、施工性などのほか、湿気の程度により上振れすることがあります。見積は必ず複数の業者から取ってください。

費用負担について

購入前ですから、湿気の対策費用の負担について売り主に交渉してみましょう。土地造成上の問題であれば、費用を負担してくれる可能性があります。

 

購入後に湿気が多い土地だと分かったとき

基本的に「水が滞留すること」、「風通しが悪いこと」を改善する対応となります。

事前に対策をする場合と異なり、根本的な原因を取り除くことは難しいケースがほとんどです。

したがって、「水を滞留させないこと」「風通しをよくすること」が対応の基本です。

 

購入後に判明した場合の対策例

✅水を滞留させないこと

・外部からの地表水の流入を防ぐ

→排水溝、排水桝の設置

・地下水位を下げる

→暗渠排水溝の設置

✅風通しを良くすること

・基礎下の計画換気

・送風機による強制換気(エアコン付き)

防湿材を使用しても湿気を遮断するだけであって、床下は湿気が多いままです。べた基礎であれば、防湿シートをするのが標準ですが、損傷、破損により防湿効果が失われているケースが目立ちます。

石灰や活性炭のような吸湿材、湿気調整材は湿気を吸収できる限界があり、限界を超えると除湿効果がなくなってしまいます。その場合かえってカビを繁殖させ、逆効果になるのでおすすめできません。

基礎内の計画換気がベターと思いますが、以下を注意する必要があります。

・正しい計画換気の設計と施工(施工業者の選定も含めて)

・梅雨や夏場は機械除湿(エアコン)にて対応

・設備設置・機械の費用のほか、電気代(ランニングコスト)がかかる

対策費用について

基礎内の計画換気およびエアコン付き強制換気の場合で、平均的には50万円~200万円にランニングコストの電気代といったところです。ただし住宅の広さ、基礎の状態、施工性などのほか、湿気の程度により費用は変わります。見積は必ず複数の業者から取ってください。

なお、正しい計画換気を設計できる施工業者に依頼する必要があります。正しく計画換気を設計する業者は少ないので、選定にはこだわってください。

 

まとめ

以上、湿気のリスク、湿気の原因および湿気対策について簡単に紹介させていただきました。

✅まとめ

・土地の価格に、湿気対策費用を考慮すべき

・住宅を建てる前と建てたあとでは、湿気対策の考え方がが異なる

・一般的に家を建てる前であれば、いろいろな対策が打てる。

・家を建てた後では、その対策の方法は限られる。

・家を建てた後では、対策費用はかえって高くつくことがある。

 

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