私は長年、地盤、地質、防災分野を専門としてコンサル、設計業務を行ってきました。
そんな私が「地盤調査」について、今まで質問・相談を受けたことをメインとしながら、独自の視点でわかりやすく説明します。
本記事の内容を、あらかじめ知っておくと、住み始めてから後悔せずに済むと思いますので、ぜひ最後まで見て行ってくださいね。
地盤調査は何のために行うの?
地盤調査はそもそも、何のために行うのか確認しましょう。
軟弱地盤かどうか調べる
住宅分野で普及している地盤調査は、おおむね10m位の深さの土が、硬いのか軟らかいのか調べる調査です。
家が沈下したり、傾斜したりするような地盤を「軟弱地盤」と言います。
地盤調査とは、地盤が家の重みで沈下したりしないか、確認するための調査です。
ポイント
・地盤調査は、家が沈下や傾斜したりしないかどうか確認する調査
軟弱地盤のリスクを避ける
ポイント
地盤調査は、以下の軟弱地盤のリスクを避けるために行う。そして、軟弱地盤だったときは地盤改良の設計に利用する。
・建物の損壊を避ける
・健康への影響を避ける
・地盤改良の設計に利用する
地盤調査の方法は?
住宅向けの地盤調査は、たいていスウェーデン式サウンディング試験と呼ばれる調査を行います。
SS(エスエス)試験、SWS試験呼んだりします。
スウェーデン式サウンディング試験(SS試験)
スウェーデン式サウンディング試験(SS試験)は地盤の強さを調べる簡易調査法の1つです。
JIS規格(日本工業規格)で試験方法が規定さています。
木造住宅の場合は、4~5ポイントで計測することが一般的です。
以下、特に断りがない限りスウェーデン式サウンディング試験をSS試験と表記します。
メリット・デメリット
SS試験のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット
・作業時間が半日程度で、スピーディー
・ほかの調査に比べて費用が安価
デメリット
・玉石、コンクリート、異物等があると計測不能
・適用深度がおおむね10m以内
・土質の判定が、やや曖昧(あいまい)になる
地盤調査は完璧じゃない
SS試験は、安価な割には、わかることが多いし、設計にも利用できるので住宅の地盤調査として普及しているのです。
SS調査は簡易調査法なので、すべてがわかるわけではありません。
その欠点を補うために、資料を確認したり、現地の状況を観察したりします。
つまり実務上、資料を確認し、現地の状況を観察し、そして実際に試験をしてみて、総合的に「どのような地盤なのか」判断しています。
ポイント
SS試験だけで地盤のすべてはわかりません。その欠点を補うため以下も併せて確認・観察します。
・資料(地形地質などの資料)
・現地状況の観察
それでも軟弱地盤かどうか判断できないときは、以下の他の調査を組み合わせることがあります。
・ボーリング調査など
そのほかの地盤調査方法
代表的なのはボーリング調査があります。
SS試験で9割以上、地盤の評価ができると思いますので、実際にボーリング調査が必要になることは少ないと思います。
どうしても、SS試験が適用できないような地盤のとき、ボーリング調査を実施します。
ボーリング調査
ボーリング調査はSS試験に比べて、土質の判定が正確にできたり、また玉石、コンクリート、異物があっても調査することができます。
その反面費用が高く、SS試験のようにスピーディーに何ポイントもできないデメリットがあります。
その他の地盤調査方法として、ラムサウンディング試験、表面波探査(レイリー波探査)試験など様々なものがあります。
ここでは詳細は紹介しませんが、それぞれメリット・デメリットがあり、使い分けられているのが現状です。
地盤調査は必要なの?
結論から言えば、地盤調査は必ず行ってください。あなたの家の安全を守るために、必要な調査だからです。
地盤調査は必要!
地盤調査が必要な理由は、軟弱地盤のリスクを避けるためですが、仮に軟弱地盤だったときに、軟弱地盤対策として地盤改良の設計に用いるためです。
あなたの家の安全を守るために地盤調査は必要です。
注意
最近では、少なくなりましたが、地盤調査を行わず、後から軟弱地盤だとわかって、家を沈下させてしまったケースがよくありました。
注意
たいていのハウスメーカーは、地盤調査を薦めるはずです。
そのようなハウスメーカーは、地盤調査の必要性を理解したうえで、あなたとあなたの家のために薦めています。
注意
まれに地盤調査が必要ないという、ハウスメーカーもあるようです。
このようなハウスメーカーはお断りしましょう。そして、地盤調査をされて、困るようなことがあると疑ってみましょう。
ポイント
地盤調査が必要な理由1
あらかじめ、軟弱地盤のリスクを避けるためですが、仮に軟弱地盤だったとき、その対策として地盤改良の設計に用いることができます。
地盤調査は実質義務化
住宅瑕疵(かし)担保履行法では、事業者に対し瑕疵担保保険の加入が義務付けられています。
これにより保険法人が定める、建物の設計施工基準を満足している必要があります。
建物の設計施工基準を満足するためには、地盤の安全性をあらかじめ、客観的に評価しておく必要があります。
したがって、実質的に地盤調査が義務付けられていることになります。
ポイント
地盤調査が必要な理由2
瑕疵(かし)担保保険加入のため、建物の安全性を客観的に評価できる資料が必要なので、実質的に地盤調査が要件となります。
住宅瑕疵担保についての詳細は、こちらをご覧ください。
住宅瑕疵担保履行法について(一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会)より
地盤調査はいくらかかるの?
住宅の地盤調査でよく用いられる、SS試験の標準的な費用を紹介します。
地盤調査の標準的費用
住宅を対象としたSS試験の費用は、標準的な場合で、30,000円前後が相場です。
ただしこの相場は、発注者に対する費用です。つまり、工務店・ハウスメーカーから地盤調査会社に支払うお金ですね。
1棟(1軒)に対する費用。2件であれば倍になります。
1棟につき標準的な調査(深度10mまで4~5ポイント実施)のときの相場です。
調査機械の起点から現場までの距離、地域、請負業者などによって当該相場が当てはまらないことがあります。
ポイント
SS試験の費用
20,000~30,000円が相場
あなたが、直接発注する場合は上記費用で済みますが、ハウスメーカー経由だと、上記費用に上乗せした費用となります。
一部の良心的なハウスメーカーでは、上乗せしてないケースもあります。
一方、残念ながら必要以上に上乗せしているケースもあります。
ボーリング調査の費用
詳細に調べたいときは、ボーリング調査を行います。
ボーリング調査の標準的費用は深度10m、1ポイントで120,000~150,000円前後です。
調査機械の起点から現場までの距離、地域、請負業者などによって当該相場が当てはまらないことがあります。
ポイント
ボーリング調査の費用
120,000~150,000円前後が相場
調査費用はタダではない!
業界から離れている私だから言える話をします。それは、地盤調査のお金はタダではない、ということです。
ハウスメーカーから地盤調査会社に対し、調査をしたら、相場のお金が必ず支払われています。
それは結局のところ、あなたのお金から支払われているのです。
どんな契約なのかでも異なりますが、ハウスメーカーの見積書に、「地盤調査費用」が入っていれば、良心的なハウスメーカーといえるでしょう。
問題なのは、地盤調査を「タダにします」と思わせておいて、地盤調査の相場(原価)の金額に、必要以上のお金を、上乗せしているケースです。
「タダより高いものはない!」ので、気を付けましょう。
地盤保証ってなに?
瑕疵担保保険と地盤保証を混同されている方が、たくさんいらっしゃると思うので、ここで確認しておきます。
地盤保証とは
簡単に言えば、地盤そのものの不具合に対して、金銭的保証を約束する民間の制度です。
簡単に言えば、瑕疵担保保険は基礎を含む建物を保険に対象としたものです。
地盤の不具合については、その保険の対象外となります。
だから地盤そのものを対象とする地盤保証があるわけです。
いちおう、地盤保証の一般的な定義は次のとおりです。
地盤保証
地盤保証とは、地盤による損害が発生した場合、地盤や建物の修復費用を保証すること。
どこの会社でも同じサービスを提供しているわけではありません。
保証する会社が契約している、損害保険契約の内容や提供主体の信用度によって、保証内容の信頼度が異なる点に注意してください。
地盤保証のしくみ
保証主体は、住宅地盤の調査会社や地盤補強工事を行う会社が、独自に保証していることもありますし、保証業務を主体としている地盤保証会社もあります。
地盤保証のしくみは、おおむね上図のとおりです。
申し込むかどうかは、あなたの自由です。
保証内容を選ぶ
あなたが、ハウスメーカーにすべてをお任せしている場合、ハウスメーカーが、たくさんある保証主体のなかで、どこにするか決めています。
たいていは、ハウスメーカーが懇意にしている地盤調査会社、地盤改良工事会社、あるいは保証会社に任せているようです。
注意
ハウスメーカー、建築会社の中には、保証会社と提携していないところもあります。
煩(わずら)わしさを避けるために、保証会社と提携しているハウスメーカー、建築会社を選びましょう。
知識のある方は、ハウスメーカーに任せず、自分で選択してもよいと思います。
この場合は、ハウスメーカーと契約する前に、自分でする意思を伝えておく必要があります。
ハウスメーカーに保証主体を任せたみなさんは、保証内容をどうするか決めましょう。
ただし、リスクを許容できるみなさんは、「申し込まない」選択もあります。
ポイント
保証内容チェック項目
・保証料、保証期間、支払い保険金額、特約、免責事項など、そして自分の希望を基準に選ぶ
保証主体によっては保証内容の選択幅が狭いこともあります。
地盤保証の費用
地盤保証の費用は、建物の種類、保証期間など保証内容、もしものときの支払い保険額、そして保証主体で決まります。
参考:モデルケース
モデルケースとして、木造住宅の場合を考えると
・保証額は1000万円程度
・30年経過すると建物の資産価値がほとんどなくなることから、保証期間は10~30年
と考えると、地盤保証料は20,000円~30,000円前後が妥当です!
地盤保証の【裏話】
免責事項はしっかり読みましょう。なぜなら、免責を理由に保証されないケースがよくあるためです。
同じ条件でも、保証されたり、されなかったり。それは保証会社によって、解釈が異なるからです。
* * * * *
保証主体は数多くあります。その中には、信頼度が低い会社にあります。
その特徴は、資力が小さい、過去に数多く沈下事故を起こした、実績が浅いなどがあります。
あなたの視点に立てば、いざというとき保証される会社がよいわけです。
そういう保証主体は、調査・工事件数に対する事故率の低さ、沈下事故が発生したときに、保険金が支払われた割合が高いのです。
信頼度の低い保証主体は、避けたいところですよね。
そのためには、ハウスメーカーと契約するときに、あらかじめ次の点を確認しておくとよいでしょう。
ポイント
・地盤保証はどこの保証主体とするのか?
・信頼できる保証主体なのか?
・ほかの保証主体に変えることができるのか?
地盤保証の【落とし穴】
地盤保証は、建物の下の地盤の不具合について保証されるものです。
地盤を原因とした不具合については、保証されます。
しかし、「擁壁(ようへき)」など構造物の不具合については、ほとんど免責となります。つまり、保証されません。
あえて、擁壁の事例を出したのは、擁壁に関わるトラブルがたくさんあるからです。
擁壁そのものの沈下事例もたくさんあります。
擁壁のトラブルの多くは、土地造成の段階ですでに問題があったりします。
もし、あなたの土地に擁壁があるなら、あらかじめその擁壁が本当に安定しているか、調査してみましょう。
調査といっても、難しくはありません。
その擁壁が、地盤の安全性を確認した設計資料があるか、見せてもらうだけです。
なければその擁壁は、軟弱地盤であることも確認せず、設置したことになります。
ポイント
擁壁に関わるトラブルがたくさんあります。
擁壁の地盤に対する安定性を確認した設計資料があるか、あらかじめ見せてもらってください。
まとめ
さて、まとめです。
1.地盤調査の目的
・地盤調査は、軟弱地盤かどうか確認する調査です。
・地盤調査は、①軟弱地盤のリスクを避けるため、②仮に軟弱地盤だったとき地盤改良の設計の資料に使用する、目的があります。
2.地盤調査の方法
・スウェーデン式サウンディング試験(SS試験)がよく用いられます。
・SS試験のメリットは、安価、そしてスピーディー。
・SS試験のデメリットは、地盤によって適用できないことがあります。
・SS試験で地盤のすべてはわからなので、資料調査および現地観察を併用して判断します。
・SS試験が適用できないときは、ボーリング調査を行うこともあります。
3.地盤調査の必要性
・地盤調査は必ず実施してください。建物の安全のため必要不可欠な調査です。
・瑕疵(かし)担保保険の設計施工基準を満足させるために、事業者(ハウスメーカー等)は実質、地盤調査が義務付けられています。
4. 地盤調査の費用
・SS試験の相場(原価)20,000~30,000円(※条件によって当てはまらないこともあります)
・ボーリング調査の相場(原価)150,000円前後
・調査費用はタダということはあり得ません。
5.地盤保証
・地盤保証は、瑕疵(かし)保険でカバーできない「地盤」を対象にしたものです。
・保証主体は、民間の地盤調査会社・地盤改良工事会社、地盤保証会社が行っています。
・保証内容をチェックしましょう。自分の希望する条件に合ったものを選びます。
・一般の木造住宅ならば、保証料は20,000~30,000円前後が妥当なところです。ただし希望する条件が高ければ、保証料はそれ以上となります。
・地盤保証の「免責事項」は熟読しましょう。
・トラブルの多い「擁壁」にはとくに注意してください。
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最後までご覧いただきありがとうございます。
それでは。